はじめに
8/19は「#ハイキューの日」でお馴染みのバレーボール漫画『ハイキュー!!』について、取り上げたいと思います。
『ハイキュー!!』は2012年から2020年まで『週刊少年ジャンプ』で連載した作品です(作者は古舘春一先生)。2023年のハイキュー!の日には、劇場アニメの公開も発表されました。
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作品の概要ですが、1巻のあらすじでは、このように語られています。
おれは飛べる!! バレーボールに魅せられ、中学最初で最後の公式戦に臨んだ日向翔陽。だが、「コート上の王様」と異名を取る天才選手・影山に惨敗してしまう。リベンジを誓い烏野高校バレー部の門を叩く日向だが!?
魅力を感じるところ
私と『ハイキュー!!』の出会いは、友人が漫画を絶賛していたので、当時放送していてアニメを見て、そこからコミックスを買い始めました。ただ、すぐに続き読みたくなり、気がつけばそこから「ジャンプ+」で週刊少年ジャンプを購読して最新話を読む状況になりました。
なぜ、そんなにハマったのか?
光の当て方
- 『ハイキュー!』では、「脇役」がいない描き方をしています。作品では主人公の日向と、ライバルの影山が物語の中心となっていますが、それ以外のキャラクターたちも丁寧に描かれていて、光の当て方を変えればそれぞれが主人公のように、しっかりと奥行きを持ったキャラクターとして成立しています。
- たとえば、3年生、2年生といった先輩や、日向と同じ1年生のキャラクターまで含めて、それぞれの名前や顔を覚えられるぐらい個性的です。
- 記憶だけで主なキャラを紹介できる、のです。
- 同じ部活の仲間たち
- 1年生
- 日向:背が小さいけれど、ジャンプ力と身体能力を備える。明るい性格の主人公で、バレー選手としての才能を影山が引き出す。影山に才能を引き出される。
- 影山:天才。「コートの王様」と呼ばれたほど独善的で、人への要求水準が高く、誰もついてこなかったが、高校ではついてくる日向がいて、彼も変化していく。
- 月山:バレー馬鹿な日向と影山と距離を取るクールな立ち位置。でも負けず嫌い。
- 山口:月山を慕う友人。レギュラーではないが、選手としての活路を自ら考えて武器を見つけていく。
- 2年生
- 田中:ヤンキー気質。上下関係を重んじる。面倒見が良い。
- 西谷:才能あるリベロ。独特の価値観を持ち、人間力が高い。
- 縁下:個性的な二人の同級生を仕切れる、影の実力者。途中で一度部を辞めている。
- 木下:同じく部を辞めている。サーブを武器に。
- 成田:ごめんなさい、思い出せなかった……
- 3年生
- 澤村:頼りになるキャプテン。安定していて、チームの雰囲気を作る。
- 菅原:ムードメーカーでありつつ、日向や後輩の成長を見守る良き存在。
- 東峰:エース。いかつい見た目で誤解されるが、気が弱い。
- 顧問・監督・コーチ
- 武田:顧問・監督で、バレーは初心者。名言メーカー。
- 烏養:かつてバレー部を競合へと育て上げた指導者の孫。試行錯誤し、また生徒の自主性を重んじている。
- こうした部活の中のメンバーでも、さまざまな選手同士の組み合わせがあり、エピソードが記憶に残るようになっています。
- 戦う高校の選手たち
- それぞれのライバルとなる高校にも個性的な選手やキャラクターがいて、印象に残ります。使い捨てではなく、主人公たち同様に同じ時間を過ごしており、物語を通じてそれぞれのキャラクター同士の間に因縁が生まれて、物語が深まっていきます。
- 青葉城西:影山の先輩・及川が中核をなすチーム。
- 伊達高校:ブロック強い。かつてエースの心を折る。
- 白鳥沢高校:県内最強。絶対的エース・牛若がいる。
- 音駒高校:かつての指導者同士が因縁ある東京の学校(新作映画化の対戦高校)
- ライバルたちの出番の多さ
- 「試合観戦の実況」という個性発揮の機会
- 『ハイキュー!』で特徴的なのは、試合観戦を通じて、これまでに登場したライバル選手たちが登場する機会が多い点です。
- 同じ試合会場にいる選手たちが試合を見て語るだけではなく、全国大会などでもテレビ放送やネット中継を通じて、同じ部活のメンバーたちと試合を見て、語るのです。これによって、それぞれの高校の人間関係や、ライバル同士の結びつきが描かれます。
- 「実況」による結びつき
- 実況といえば、『ヒカルの碁』です。ネット囲碁を通じて様々な競技者が語り手となり、個性を見せました。解説を伴う囲碁や将棋の作品も、こうした「実況」を通じて、個々の選手が際立つ構図ですね。
- 将棋漫画と言えば『3月のライオン』の新刊も出ますし、最近は『バンオウ―盤王』も熱いですね。『月下の騎士』も好きでした。
- 練習試合・合宿
- スポーツ作品では定番と言える、ライバル高校や強豪校との練習試合や合宿も、選手同士が縁を深める機会として描かれます。
- 特に『ハイキュー!』では、主人公たちがいる烏野高校は成長途上の挑戦者なので、負けることが多いながらも、合宿で武器を身につけていく、強さを伸ばす過程になっています。
- この合宿での他校の生徒たちとの人間関係の成立も良いのです。
- 強化合宿
- 選ばれた選手たちが集まる強化合宿も、大きな成長の機会となります。
- 烏野高校では日本代表レベルの選手は、影山だけですが、一度招集があり、そこで全国レベルの選手たちと出会い、後に対決します。
- この影山の合宿参加の同時期、烏野高校がある宮城県の選手たちを集めた合宿があります。日向は呼ばれませんが、勝手に参加します。日向は公式練習に参加できず、ボール拾いやドリンク用意など雑用を担当しますが、ここで劇的に成長します。
- 本当に、ここのために読んでいただきたいです。
- 社会人編
- これはボーナスステージ、読み続けた人へのご褒美です。
多様な価値観
長くなってきたので、巻いていきますが、『ハイキュー!』の大きな魅力として語っておきたいのが、「バレーの強さだけを描いていない」という点です。
- 試合での敗者
- スポーツ作品は基本的に試合に勝つことを前提としており、必ず敗者が生まれます。主人公たちも敗北し、そこから成長していきますが、その悔しさを受け止めても「次がない」3年生として引退する選手たちもいます。
- そうした選手たちの悔しさには「もっと練習しておけばよかった」といった気持ちも含まれており、「高校での部活を終える選手たち」の姿が、作品では随所に描かれます。
- 部活での離脱者と復帰
- 厳しい部活に耐えかねて、部を辞める。それは「逃げ」なのか、「自分の人生を選ぶ」ことなのかは、最終的には本人次第です。『ハイキュー!』ではこうした離脱を否定せず、辛くて離脱した後に復帰した選手たちもいます。
- 部活に存在する様々な痛みや、悩みや葛藤が描かれているのです。
- 人生は続いていく
- スポーツ漫画で全国レベルで活躍した選手の行先は、競技者としての頂点を目指す未来が描かれることも多いです。『ハイキュー!』でも、そうした未来が描かれます。
- しかし、高校での部活を終えて、その後、バレーボールとは関係ない人生を進んでいく人々も、作品の中では当たり前に描いています。
- 天才的選手として描かれた選手が、その後は競技の道に進まず、世界旅行。
- ご飯が好きで、飲食サービスを始める。
- お米作り。
- 怪我をした選手のリハビリをサポートする理学療法士。
- パティシエなどなど。
- 競技者としても、世界の頂点から日本のプロ、社会人・実業団、指導者など様々な関わり方の未来図があり、そこに、競技に関わった人たちが選んだ人生の多様性があります。
- もちろん、バレーボール漫画なので、ライバルだった日向と影山は競技の頂点を目指し、そこに集う「怪物」たちと戦っていきます。特に、日向が成長を遂げていくその道筋は素晴らしく、是非、お読みいただきたいです。
- 最終巻の表紙は1巻と同じ構図ですが、そのプロセスがもう、良いのです。
成長の描き方
- 主人公・日向の才能は、天才・影山がいることで引き出されたものでした。そのため、影山不在では日向の才能を評価しないという指導者もいました。
- そうした中、日向は影山がいなくても活躍できるように、自ら考え、人に学び、成長していきます。その成長のプロセスも良いのです。
- 指導者に学ぶ:技術を学んだり、疲労回復に必要な知識を学んだりします。
- ライバルに学ぶ:戦う中で、敗北する中で、試行錯誤や相手に学び、成長します。
- 自ら学ぶ:日向が最も成長した機会は、個人的には「ボール拾い」だと思います。そしてそれを見守り続けた菅原が尊いのです。
- ロールモデルとの出会い:自分と同じく背が高くないながらも、大活躍する選手と出会い、自らもそうなれるという成長への確信を得る。
- こうした「自ら考える」スポーツのあり方は、今では当たり前になっているでしょう。
- タイムリーなところでは、夏の甲子園での慶應義塾高校の優勝で注目を浴びていますが、高校野球を題材とした漫画では『バトルスタディーズ』が、元PL学園の野球部の選手という経歴の方が作者のため、こうした流れも作品に反映されています。
- 個人的には、選手が自ら考えて成長する作品としては、『帯をギュッとね!』を挙げます。この作品も語ると長いのですが、「楽な練習をするではなく、大変な練習でも楽しむ(意味を考え、自ら選択する)」姿勢の提示は、「自ら考える」姿勢そのものです。
- 「飯を食うみたいにバレーしよる」
- これは日向の姿を見た、対戦相手の選手が言った言葉です。
- ある領域で能力を発揮している人は、才能があるように見えるかもしれませんが、「飯を食うみたいに自然に、その対象に向き合っている」ことも多いでしょう。
- 「好きこそ物の上手なれ」との言葉のように、「そのことばかりを考えて、生きている」「それを楽しんでいる」という姿が、『ハイキュー!』には凝集されており、それでいながらそれ以外の価値観も否定していない点が、この作品の好きなところです。
- 仕事にもそんなところがありますね。
- 1日8時間、睡眠時間と同じかそれ以上に時間を費やすので、「好き」になるところを見つけ、(大変さも含めて)楽しみたいものです。
- 漫画が好きな人にとっては、漫画を読むことが仕事につながる環境です。
- 一緒に仕事をする方を、絶賛募集中です。
まとめ
- 漫画公式サイト https://www.shonenjump.com/j/rensai/haikyu.html
- アニメも素晴らしいので、アニメも是非。https://haikyu.jp/