君は小宇宙を感じるか？宇宙総力戦！ハレー彗星探査について by バックオフィス担当A

※周期彗星…地球と同じように公転周期を持ち、楕円軌道でグルグル回っている彗星

古来から多くの文献に記録されているため、人類に最も馴染み深い彗星と言えます。宇宙に詳しくない方でも、名前ぐらいは知っているのではないでしょうか。

前回は1986年2月に地球に最接近し、次回は2061年夏に観測できると計算されています。

（1986年に撮影されたハレー彗星）

そう声をかけたのは、アメリカ（NASA）くんでした。

当時、ハレー彗星が地球に最接近すると話題になっていて、「各国の宇宙機関で協力して衛星を飛ばして探査しないか」というお誘いでした。

この呼びかけに、旧ソ連くん、EUくん、日本くんが応じ、後の『ハレー艦隊』が作られました。

（『ハレー艦隊』ってなんだかロマンを感じる名称ですよね）

また、ハレー彗星探査を行うにあたって、『ハレー探査関係機関連絡協議会（IACG）』という議会が組まれました。 国が天文の世界に政治を持ち込まず協力しあうことを誓い合ったのですが、当時は東西冷戦状態で、東西陣営が核弾頭を突きつけあう中、こんな風に協力するのは非常に珍しいことだと言えます。

「さぁ、探査のためのロケットと衛星を作るぞ！」と意気込む日本くんですが、当時の日本くんはロケットや衛星に関する技術や知見、そして何より予算が足りないという状況でした。

以下が当時の日本がハレー彗星を観測する際に足りないとされていたものです。

ロケットは戦後から既に何度も作られており、日本くんも持ってはいたのですが、ハレー彗星を観測する衛星を飛ばすには速さ（秒速11km）が足りないため、ロケットも新たに作る必要がありました。

実際にハレー彗星観測を行うまであと4年。最初からすべて開発するには、時間もお金も人も足りません。

しかし、我々日本の宇宙開発に不可能はありません（多分）。 限られたコストで開発を行うことを得意とする日本くんは、この難所も工夫とアイディアで乗り越えます。

開発中の1983年に日本海中部地震が起き、津波で秋田県にあった能代ロケット実験場が壊滅するというアクシデントにもみまわれましたが、地元民や民間企業の協力もあり、なんとか4年というリミットに間に合わせることができました。

▲既存のM-3Sというロケットを魔改造して制作されたM-3SⅡ（ミュースリーエスツー）ロケット

そして1985年1月8日、内之浦宇宙空間観測所からハレー彗星を観測する衛星『さきがけ』を打ち上げ、この半年後に2つ目の衛星『すいせい』を打ち上げます。

ここで各国の衛星をご紹介。

▼日本：さきがけ、すいせい さきがけは彗星付近の太陽地場やプラズマの観測、すいせいはハレー彗星の大気や紫外線撮影を行う

▼ソ連（当時）：ベガ1号、2号 ハレー彗星までおよそ9000kmまで接近して撮影するため、全体をシールドで保護されている

▼EU（ヨーロッパ）：ジオット ハレー彗星の核を観測するために作られた　ベガとは異なり、前方集中保護型

▼アメリカ：アイス 新開発ではなく、1978年に打ち上げた衛星を向かわせた ハレー彗星通過後の粒子測定を行う

そして、各国が衛星を無事に打ち上げ終わった後の1986年3月6日。 多国籍軍ハレー艦隊の戦いが始まります。

事前に衛星同志が近づきすぎないよう、一列に並んで配置。 そしてアメリカくんのアイスが隊列を見守り、精密な位置情報を送り、ハレー彗星へ誘導します。 ハレー艦隊で先陣を切ったのが、重量級のベガ1号。彗星からの塵を全体防御で受け止めながら観測と撮影を敢行。データをソ連くんのツープ飛行管制センターに送信しました。 そのデータをもとにハレー彗星の状態を確認し、ジオット突入の一助に。

2日後に日本くんのすいせいが接近。途中、被弾しながらも14万5000kmまで接近して、観測に成功。

続いて3月9日にベガ2号が最接近。同日、さきがけがハレー彗星の前方を通過して観測。

3月14日、最後のジオットがハレー彗星に突入開始。ジオットは襲い掛かる猛烈な塵を受けながら核に最接近し、途中でカメラに被弾したり通信不能になりながらも、画像撮影を敢行。

その様子をベガシリーズが撮影し、突入していることを地上に伝え、ジオットは無事にハレー彗星から離脱、前線から退却。

全機、無事にミッションを達成し、世界的な宇宙観測を終えました。

ハレー艦隊の活躍により、それまで謎とされていたハレー彗星の核の成分（主に氷）の解明や、紫外撮像によるハレー彗星の自転周期、水放出率の変化の測定などなど、人類にとって非常に貴重なデータが集められました。

ハレー艦隊は各国が太陽系探査を協力して実施する先駆けのケースとなりましたが、その後しばらくはハレー彗星ほどの本格的な国際協力体制は見られませんでした。 しかし、これを機に日欧が太陽系探査に進出したことや、冷戦の終結、予算の制限などにより、各国の探査で相互に配慮するようになり、現在の宇宙開発に至ります。

いかがだったでしょうか。 だいぶショートカットした内容だったので、もっと詳しくハレー彗星やハレー艦隊のことを知りたいという方は、ぜひWikiやJAXA（宇宙航空研究開発機構）のホームぺージなどをご覧ください。

ペンシルロケットから始まった日本の宇宙開発は、素晴らしい努力と工夫、そして失敗の結晶です。短いので、もしよければこちらもご覧ください。

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